【マイノリティ向け】映画「きっと、うまくいく」
「インド映画、すぐに踊り出しがち」
そう思って観るのを避けていた、そこのあなた。
元気を出したいから、笑って泣ける面白い映画を観たい! と思っているあなた。
そんなあなたにオススメしたい映画が、「きっと、うまくいく」です。
踊るか? 踊らないか? と問われると、「踊るし、歌うよ? そんでもって、めっちゃ面白い!」そう答えずにはいられない、とても素敵な作品です。
この作品を観終わったあと、あなたもつい「あのフレーズ」を何度も呟いていることでしょう。
※以下ネタバレを含みますので、ご注意ください。
飛行機を止めてでも会いたい男
まず、インド映画らしく冒頭からぶっ飛ばしています。
謎の人物「ランチョー」を見つけたという電話を受けた男・ファルハーンが、離陸直後に急病人のフリをして、飛行機を引き返させます。
非常識だ! という意見はさて置き、ファルハーンは親友・ラージューに電話を掛け、大急ぎで迎えに行きます。
そして、そのラージューもまた、慌てて家を飛び出して来たので、ズボンを履き忘れていました。
そして、二人は「ランチョーを見つけた」という電話を掛けてきた男・チャトゥルに言われるまま、待ち合わせの場所である、母校ICE大の屋上へと向かいます。
しかし、そこに目当てのランチョーは居ませんでした。
居たのはイヤミな同級生のチャトゥル一人で、彼はファルハーンとラージューが5年間捜したものの、結局見つけることが出来なかった男・ランチョーに、これから会いに行くと告げます。
二人はチャトゥルの運転する車に乗り込み、いよいよランチョー捜しの旅が始まります。
歌が良いのよ、歌が
ランチョー捜しの道中、広大な自然を背景に流れる歌が、とても素敵です。
風みたいだった彼
凧みたいだった彼
今はどこに? 彼を捜そう風みたいだった彼
凧みたいだった彼
今はどこに? 彼を捜そう僕らは流されて生きていた
彼は自分の道を切り開いてた
波瀾万丈が楽しそうだった彼僕らは将来を心配していた
彼は今を楽しんでた
一瞬一瞬を楽しく生きてた彼一体どこからやって来たのか
心に触れて去っていった彼
今はどこに? 彼を捜そう炎熱の中の日陰だった
砂漠の中のオアシスだった
心の傷につける薬だった彼僕らは井戸の中の蛙だった
彼は大河に飛び込んでた
流れに逆らって泳いでた彼雲のように自由だった
ランチョーという人物が、どれほど魅力的な男なのかを観る者に期待させ、早くランチョーに会いたい! そう思わせるような歌詞となっています。
一味違う男・ランチョー
シーンは回想へと移ります。
飛行機引き返させ男・ファルハーンと、ズボン履き忘れ男・ラージュー、そして行方知れず男・ランチョーの三人は、大学時代のルームメイトでした。
新入生歓迎会という名の後輩イジメ大会で、ファルハーンとラージューをはじめとする新入生一同は、疑問を抱きながらも、先輩に言われるがままにパンツ一丁で変なセリフを口にします。
そこへ、遅れて現れたランチョー。
危うく彼も恥をかかされそうになりますが、彼は反対に、とある方法で悪い先輩をぎゃふんと言わせます。その方法が、また面白い。
その後もランチョーは流れに逆らい続けます。
先生に盾を突き教室を追い出されたり、中庭でシャワーを浴びたりと、彼の自由気ままさにヒヤヒヤしつつも、周りはどんどんランチョーワールドへと引き込まれていきます。
もう一人のマイノリティ
そんな、我が道をゆくランチョーに少し似た男がいました。彼の名は、ジョイ・ロボ。
ジョイは大学4年生で、ランチョーたちの先輩です。彼は物事をとことん突き詰める性格で、そこはランチョーに似ていますが、とても繊細です。
卒業制作が締め切りに間に合わないことを厳しい学長に咎められ、ジョイは一所懸命作った未完成のヘリコプター(ドローンのような、カメラが付いたもの)を、泣く泣くゴミ箱に捨ててしまいます。
そんなジョイを陰から見守っていたランチョー。彼はゴミ箱からジョイのヘリを拾い、寮の部屋へと持ち帰ります。
そして、ルームメイトであるファルハーンとラージューに、ジョイの代わりにヘリを完成させ、飛ばせてみせると宣言します。
「自分の試験のことはどうするのか」と心配するラージューに対し、ランチョーは「怖がりだな。胸に手を当て、『アール・イズ・ウェル(うまーくいーく)』と唱えてみろ」と言います。「心はとても臆病だから、マヒさせる必要がある。困難が生じた時には、『アール・イズ・ウェル(うまーくいーく)』、そう唱えるんだ」と。
なんとその後、ランチョーはジョイのヘリを完成させてしまいます。
急いでジョイに知らせなくては! その一心で、ランチョーはジョイの部屋の窓まで勢い良くカメラ付きのヘリを飛ばします。
しかし、手元のモニターに映し出されたのは、変わり果てた彼の姿でした…。
※ネタバレは以上となります。
続きはぜひ、ご自身の目でご覧になって下さい。
流されずに生きよう
ランチョーと同じマイノリティであるジョイ・ロボの死は、周りに流され夢を諦めた者の行く末を表しているように見えます。
ジョイがもう少し踏ん張り、自分を貫けていたならば、きっと、彼は夢を叶えられていたに違いありません。
似た者同士であるランチョーとジョイの運命を分けたものは、「きっと、うまくいく」と自分を信じることが出来る、前向きな心の有無でした。
発達障害を持つ人々は、自己肯定感の低さから、不得意なことに注目してしまい、自分の得意なことや好きなことを、つい忘れてしまいそうになりますよね。
そんな怖がりのマイノリティに、周囲に迎合して生きることが成功への道ではないと気付かせてくれる。それが、この映画「きっと、うまくいく」だとわたくしは感じました。
「アール・イズ・ウェル(うまーくいーく)」
皆さんがいつか壁にぶち当たった時、このおまじないを唱えてみてはいかがでしょうか。
最後まで読んでくださったあなたに感謝します。
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